旧 太極拳よもやま話 未分類

認識

2013年12月18日

 これは日本語と中国(恐らく韓国語?)のいずれにも使われている言葉ですが、どちらかというと日本語での意味合いが一番深いです。中国語では最近になって日本語のような意味合いの「認識」という使い方が出来つつありますが、遡って古代中国語の中では現在の日本語で言う「認識」との意味合いは既に存在していたことがわかります。私は中国での義務教育の殆どの時間が文化革命に重なっていた関係で中国語古文は現在に渡り独学し続けており、逆に日本語で中国語と重なっている言葉からも元々、漢字文化の中で生じた中国語退化や言葉自体の異変なども心が痛い程認識しております。例えば、幼い頃に習得した中国語の中の認識と言う言葉は「私が誰々を認識している」という表現だと誰々とは知り合いだという位の軽率な意味合いしか持っていなかったことです。言葉の重みというものも来日して25年立つ位になってやっと少しずつ身につけはじめているような気がしてきた今頃であります。
 勿論のように太極を専門分野としている私ですが分野内の色々な認識を思い存分語りたいと存じます。まずは呉式太極拳に対する認識です。呉式太極拳という拳法は最初に出会った時にはかなり疑問的でしたね。私は幼い頃に呉式太極拳に出会う前から既に形意拳と陳式太極拳に出会っていましたし、実際に6歳からは既に修練しはじめていましたが、体質が弱い自分は結構頑張ってもなかなか虐めから完全に自分の身を守る程の拳法は身に付いていませんでした。四人の叔父や叔母は共に呉英華師、馬岳梁師の元で呉式太極拳を学んでいた為、自分も半信半疑で叔母の黄立元の紹介で呉式太極拳に身を投じたわけです。父親の政治問題で幼い私は学校で絶えず虐めを受けていましたが、頑張って練習していた形意拳や陳式太極拳は殆ど役立ちませんでしたね。これは形意拳と陳式がいけないのではなく、幼い私が本当に弱くて力がなかったからです。私は最初のうちは呉式のような柔らかくて不思議な推手技法を疑いましたね。自分があんなに形意拳の技を繰り広げて体の大きい同級生や高学年の学生に立ち向かっても力不足の為悉く跳ね返されてしまいました。呉式では無理だと思っていましたね。だが、本当に不思議な呉式太極推手の三手の技法で学校で一番強い奴を倒しました。これで自分が呉式に対する認識がぎゃらりと百八十度変えました。
 太極勁に対する飛躍的な認識は呉式太極拳を修練して30年近く経ったところのことになります。言い換えれば呉式の最初の三十年間は所謂太極勁での推手ではなく、はっきり申し上げると若さによる瞬間反応の速さやパワー、そして呉式推手の多種多様な技法での推手でした。当然の様に若い奴との推手はかなり激しいでしたね。倒したり倒されたりして時折不愉快なこともしばしばありました。青年になった私は重労働のおかげてパワーがかなり付くようになり、同年代の中でもトップレベルでしたが、師馬岳梁との推手練習ではいつものように右往左往して、簡単に10数メートルも飛ばされてしまいます。当時は師に対して、絶対に他に何か秘密の技があると信じていましたが、でも、師は練習すればいつかはこうなるといつものように淡々と教えてくれます。来日してからは勉強やお仕事が忙しく、推手の相手もいない為慢架、快架、八門五歩十三勢気功や他の気功などを中心に修練し続けて参りました。推手が大分していない時間が過ぎて来日して10年程経ったところで幾人の太極拳先生や師範と知り合い、完全個人レッスンで太極拳や推手を教えるようになりました。その時に突然感じたことですが、推手時自分も昔程力を使わなくなったのです。若い頃に私は師が言う力を使わない軽い推手がなかなか信じられないですし、自分は師のレベルになることは師が秘密の技を伝授しない限りは無理だと、そればっかり考えていました。暫く推手せずにして太極拳と太極気功のみの修練で人間も変わりますね。そして、少しずつ年が取るようになると力も自然に落ちるようになったのですが、このようなことで人間は何故か少しずつ太極勁が付くようになるとは本当に考えていませんでしたね。今になってもう太極勁の修練に疑っていませんし、40歳過ぎてからは抜本的に太極勁に対する認識が変わってきたはすです。
 太極拳も太極勁も違う時期に違う認識があることは当たり前のことであり、世のすべての分野に於いても時期によって違う見解が出てくることも多くの違う分野の方々とのお付き合いの中で確認致しております。人間という動物ですが一番足りない物は恐らく素直さではないかと感じております。例えば、現段階で認識出来なくてもいつか必ず認識出来るようになることを期待を寄せるかどうかですよね。
 太極思想はこのような教えですが・・・・・・。

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