旧 太極拳よもやま話 未分類

太極拳の遅いと力まないことの解釈

2012年12月31日

 大晦日に相応しく、多くの方々が一番疑問に思っていて、不思議に思っている太極拳理論を説明いたします。
 確かに、誰もが遅くて、無力な太極拳というものを疑い、または、太極拳はただ体を鍛えるもので武道としては成り立たない説も一般的に世に広がっています。
 ただ、武道というものはまずその学理を研究し、次にその使う方法を馬学び、方法が熟練したところではじめて応用が出来ます。拳法に問題があるのではなく、修行が足りないだけです。鋼を練るに似ていますが、鋳鉄を何回も練り上げれば初めて鋼になるように、長時間にわたっての努力が必要です。
 ということで、太極拳は「遅い」という原点にあります。その練習時間は自然に任せています。(3~4分の間で終わらせることは有り得ない)力も気も使わず意(脳による制御)を使います。力を使うと動作が硬直になり、気を使うと全体が滞る為、太極拳は気を落ち着かせリラックスした力を重んじます。太極拳は落ち着きさで激しい動きを制し、柔らかさで強力を制し、何も無いところで太極パワーが生まれます。(力)あるようで無いようで、現実のようで幻のようで、逆らう相手にはきちんと受け、付かず離れず、すべては重心のバランスにあります。遅いものは滑らかです。遅いから安静出来るし、安静出来ればきちんと守れます。守れば中定があり、これは言わば心(脳)と気の中定です。心(脳)が落ち着けばすべてが安静になり、安静すれば脳の意識が安らかになり、意識が安らかになれば体全体の気(エネルギー)も落ち着きます。気が落ち着けば精神集中になり、集中すれば太極拳に専念出来、体全体が一気貫通(太極拳最高状態)のような状態になります。
 遅ければ心が細かに、心が細かであれば意識がはっきりします。意識がはっきりすれば気が爽やかで滞ることがありません。
 速ければ荒っぽくなり、こころが荒ければ急ぎ、急げば気(体内エネルギー)が浮きます。気が浮けば落ち着きがない、心が急げば落ち着きがない、落ち着きがなければ心(脳)で守ることが出来ず、太極推手全体が散乱する様になります。虚(精神の収斂)と霊(はきはきした動き)が求められないです。静をもって動を制し、柔をもって剛を克することがすべて感覚から来るものです。
 というわけで、太極拳基本拳は心身を鍛える根本的なことであって、太極拳パワー(武道にしても、健康法にしても)が推手の練習にかかっています。推手の初心者はまず感覚から入りましょう。体も心(脳)も感覚を体験し、細かに感覚を鍛えればその太極拳的利益が言い尽くせないです。こうなれば我も彼もよく知るようになります。(推手時)この体験は人それぞれ心得るものであって、他人が教えられるようなものではありません。太極無限の変化はすべて鋭い感覚から来ます。その感覚は相手の微妙な動きを知り、心(脳)で推手を制御することが出来ます。
 これが「遅い」と「力まない」の原理です。
 ?危公藻大師太?巽拳讲义より
 呉式太極拳研究会師範 沈剛

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