一般的に知られている「太極推手」が古代「太極打手」から変化してきたことは太極拳本系本元の中では互いに暗黙の了解で認めておりますが、勿論、打手を推手に変化させたのが古典道教太極拳の流派であります。では、「打手」とはどのようなものだったのでしょうか?
多くの皆様がご存知のように太極拳理論の中で「打手歌」がございます。
掤捋擠按須認真。上下相隨人難進。
任他巨力來打我。撁動四两撥千斤。
引進落空合即出。粘連黏隨不丢頂。
私的に訳するとこのような意味合いになります。
掤捋擠按は真面目にやるべし。上下を繋いでおけば相手は入れないでしょう。他人はどれほどの強い力で攻め込んでも、四両に力で千斤のパワーを動かそう。相手を自分に懐に誘い力点を与えなければ「合」が上手く出来れば自動的に出てしまい、粘(沾)、連、黏、隨、と不丢頂の五つの「太極勁」を常に鍛えよう。
これは基本的に現在の「円形推手」ではなく、かつての「打手」の基本綱要になります。
掤、捋、擠、按は言及されたのですが、採、挒、肘、靠については触れていません。現在の一般的な所謂太極拳では掤、捋、擠、按を四つの動作、四つのポーズというふうに預かっていますが、太極拳本系本元では掤、捋、擠、按、採、挒、肘、靠、粘(沾)、黏、連、隨、不丢頂のことを十三種類の「太極勁」として預かっています。
合即出という表現ですが、相手を後ろへ押し出すとは言っていないです。後方へ退いている時は「合」であることは、楊班侯「太極陰陽顛倒解」で既に説明しておりますが、「合」の時、上半身のすべての部分が柔らかくなっていれば、相手が自分で重心を失うことになります。所謂、合即出ですね。前後左右のどの方向でも有り得るですよ。