第四十八章
学問をするとき、日ごとに蓄積していく。
「道」を行うとき、日ごとに減らしていく。
減らしたうえにまた減らすことによって、何もしないところにゆきつき、
そして、すべてのことがなされるのだ。
だから、無為によって、しばしば天下を勝ち取る。
行動するようでは、天下は勝ち取れないのだ。
第四十九章
賢人には定まった心はない。
だが、人々の心をその心とする。
彼は善であるものを善とするが、善でないものも善と考える。
このようにして、区別のないものに達する。
彼は真なるものを真とするが、真でないものも真と考える。
このようにして、区別のないものに達する。
天下の賢人は良心的に人々の心を区別のないものにする。
人々は見たり聞いたりする感覚をあてにするから、
賢人は彼らを赤子のように扱う。
第五十章
生きのびる道と死にいく道がある。
十人のうち三人が生きのび、十人のうち三人が死んでしまう。
さらに十人のうち三人が生命に執着するが、しかし、彼らもそれを失ってしまう。
何故かといえば、生命を豊かにしすぎるからである。
自分の生命を守るにすぐれた者は、虎や犀に出会うことがない。
戦場においても、危険な武器を身につけない。
犀も彼を突き刺すことはできないし、虎も爪でひっかくことができない。
武器も彼を傷つけることはできない。
何故かといえば、彼に死という場所がないからである。