第十九章
識別することをやめ、知識を放棄せよ。
そうすれば、人々は何倍も利益を得るだろう。
慈善をやめ、道義を捨てよ。
そうすれば、人々はたがいにもっと愛しあうだろう。
利口な教えをやめ、利益を捨てよ。
そうすれば、盗みや詐欺はなくなるだろう。
識別と知識、慈善と道義、利口と利益はただ外面的な工夫にすぎない。
そこで、これら以外の何かを求めなければならない。
純真さをあらわし、生まれつきの本性に固執せよ、
自己本位の自己を取りのぞき、強欲を捨て、人による学習を捨てよ、
そうすれば思いわずらうことはなくなるだろう。
第二十章
敬意を表して「はい」というのと、非礼な「ああ」ということにどれほどの違いがあろう。
善と悪にどれほど違いがあろうか。
他人が恐れるところで、私もまた恐れなければならないだろうか。
これは何とばかげたことか。
人々は生けにえの祝宴を楽しみ、花咲く春の日に高台に登って楽しんでいるかのようだ。
私はただ一人、身じろぎもせず、何と静寂にしていることか。
ちょうどまだ笑ったことのない赤子のように。
戻るべき家ももたず、目的もなく私はさまよう。
人々は多くの野心と欲望をもっている。
私一人だけがこれらすべてを置き去りにしてきてようだ。
私はなんとなまくらだ。私の心はまったく愚かものの心だ。
人々は光り輝いているのに、私一人が暗く鈍い。
人々は賢く好奇心が強いのに、私一人がはっきりしなくて鈍い。
私は穏やかな海のように何と静かなことか。
私はなにものにも縛られず流されるようだ。
人々はすべて目的をもっている。
私一人が異様で、善くないもののようだ。
私には他人と違っているところがある。
私は「母」によって養われている。