第七十九章
深い怨みを和解させても、必ずいくつかの怨みがあとに残る。
このように、和解は最善の方法とはいえない。
賢者は借人の契約書は握っているけれど、借人に支払いを求めない。
だから、
「徳」のある者は契約書を握るだけであり、
「徳」のない者は税金のとりたてをする。
自然の道にえこひいきはない。
それはつねに善人の側につく。
第八十章
小さくて人口の少ない国がある。
数多くの道具があったとしても、誰れもそれを使わない。
人々は生命を大事にし、誰れも遠くに移住することを望まない。
船や車は役に立つが、誰れもそれらに乗らない。
すばらしい武器を所有していても、誰れもそれを使わない。
人々にもう一度、縄を結んで約束のしるしとしたような時代に戻らせ、
すばらしいごちそうで楽しませ、立派な服装を着させる。
自分の住居でおちつかせ、習慣を楽しませる。
隣の国はすぐ見えるところにあり、鶏の鳴き声や犬の吠えるのがきこえるけれど、人々は互いに往き来することもなく、その人生を送るのである。
第八十一章
言葉が真理をあらわしていると、その言葉は美しくなく、
言葉が美しいと、その言葉は真理をあらわしていない。
本当に立派な人は言葉で議論をせず、言葉で議論する人は立派ではない。
本当の知者は博識でなく、博識の人は本当に知っていない。
賢者は蓄めることをしない。
他人のために出し尽くすと、得るものは多くなり、
他人のために分けてやると、得るものはさらに多くなる。
天の「道」は善いことをなすが害を加えない。
賢者の「道」は行いをするが名声を求めない。