旧 太極拳よもやま話 未分類

太極思想という呼び掛け

2013年10月9日

 大概、思想となると誰でも嫌がるです。何だか政治と繋がってしまうようですよね。国を問わず投票しないのが近代人の勲章にもなりつつ今日ですが、5000年程からの道教思想から来た太極拳というものを今更思想レベルへ持ち上げる必要があるか否かを議論する前に、太極拳自体も美しく綺麗な体操になりつつありますので、太極思想というものが何だかの形で支持者が現われていても根強く社会に浸透出来るほどの学術になれるとは考え難いです。まして、一つの思想の樹立は一般的に数百年かかり、何代の人々の努力がない限り実現出来ないものですので、本日の個人的な考えはあくまでも一つの構想に過ぎません。  
 年頭に老子道徳教を「四方山」でアップしてみたのですが、かなりの反響でした。でも、道徳経が太極拳だとは言えないですね。道教的思想はその宗教自体が持つ独特な人間哲学に過ぎないですが、太極拳はそのような人間哲学の影響も当然のよう受けており、更に人体哲学も総合的に盛り込まれています。これでは一つの思想としてのすべての要素は揃ってきましたが、あとは近代人的にいかにしてこのマイナー的な思想というものに興味を持たせるかという問題になります。
 そして、勿論近代人的にはかつての武道家の皆様みたいに自分の命を懸けて毎日のように一生懸命武道を修練することは無理でありましょう。これは、近代社会という独特な誘惑に満ちている環境によって決まられます。近代人が追求しているのがもはや目と鼻先の快感やリラックス、格好良さ、そして、身に纏う飾り物などになりますが、太極拳のようなものは趣味の世界だったらまだ許されます。例えば、同一した綺麗な太極服はそうでしょうし、そして太極拳自体にも体操的なボディ美を表現するものでしたら自然と人気が生まれてきますね。それは私も非議いたしません。多くの人々が納得出来る太極拳を展開すれば商売的にはもってこいですね。そのうち、「シライ式太極拳」も生まれるかもしれません。楽しみですね。
 ところで、太極拳をやっていて家族との関係が少しずつ良くなったとか、本人が太極拳をやっていて長い間の持病が少しずつ治ってきたとか・・・、一人の大人として他のグループや会社では味わえない落ち着きのある太極拳学習とか、成るべくストレスを溜めないで自由に太極拳を楽しめるとか、わたくしですが、約10ヶ月の間、色々な方に色々な太極拳や推手、武器を教えて来ましたが、教学以上にそれぞれの身体バランスを把握し、一辺倒ではなく、それぞれに必要な太極拳訓練内容やその他のケアーなども最大限に展開してきています。そして、不思議に周りの学生達も互いに親身になり、出来る限り同じ研究会のメンバーの悩みも聞くようになり、そして、教学が終了しても数人の学生さんが自発的に推手の復習をしていたことも本日伺いました。おそらく自分が長い間目指している太極思想の現れだと勝手ながら感じておりますね。
 近頃、私の研究会でプロ、一般問わず「太極陰陽顛倒解」という太極理論を教え始めています。これは太極拳の家元でも現在、なかなか教えるチャンスが少ないし、勿論、理解出来る師範も段々、減ってきましたね・・・。最初、太極拳研究会を立ち上げた時点では少なくとも3-4年過ぎてから教える予定でしたが、皆さんがあまりにも熱心に勉強しており、太極的動きも面白いように身に付き始めたので、少々、難しい理論も入れておく試みをしました。でも、やはり難しいようですね。
 本日は一人の学生が私のこう聞いてきましたが、難しい理論が太極拳修練時の妨げや雑念になりませんか。私はこう答えました。理論というものは勉強が終わった途端に忘れるべきですね。日本がマニュアル社会ですが、でも、太極拳の世界ではもはやマニュアルが必要としません。よき社会人も実はマニュアルを知っていながらも働く時はマニュアルのことを忘れて体が自然に動ける人の効率が良いはずですよ。

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