中国の武道では昔から師匠が弟子に教える時は「三手を隠す」という習慣があるそうです。昨今ではインターネットが日常生活に浸透しyou tubeで検索すればどのような拳法も簡単に見れるようになりました。この私は呉式太極拳以外何も出来ませんが、かつて上海の公園で色々な拳法の先生との交流があり、いくつの拳法は何回も見たことがあります。でも、近頃の色々な拳法を見ていると怖い程に完全ではないことが見て取れます。わざと内容を端折ったのはわかりますが、型ズレもやはり半端ではありませんね。動画のキャッチコピーを見ていると「某大師直伝某先生の貴重な動画」とか、世界の色々な言葉でのコメントがネット上で展開されております。しかし、この門外漢の私でさえこれは間違っていないと疑う程のものが多いことで本当に慄いています。
では、呉式本系はどうかというとあまり優れているわけでもありません。現在のところは上海本系の理事達が六代目弟子以降の実力を総合的に分析した結果、かなり楽観視出来ないことがわかっております。把握している内容も乏しく、師匠の名前だけを欲しがり個人で勝手に呉式太極拳を変えたりもしています。中には弟子入りだけして於いて、基本拳を適当勉強したらすぐに呉式弟子であることを看板にして「本格派呉式太極拳教室」を経営してしまいます。というわけで中国という国もネット上では現在、大師や某巨匠直伝が飛び舞っている状態です。
人間が生きて行くには何だかの商売をしなければなりおませんが、習い事をとことん商売化にしたらその本来の価値が消え失せてしまうことは本当に恐ろしいです。
私でしたらこのような方に対しては弟子入りを許可しませんが、(私は今日に至る迄弟子は一人もいない)もしも弟子の人間がこのような半端な気持ちで太極拳をやっていたら、私は三手どころか三〇手を隠しますね。理由は簡単ですが、教えてもただ混乱するだけだし、習得不可能です。とどのつまりこのような経緯でこのような弟子は色々なところで自分の師匠の悪口を撒き散らし、師匠が保守的な人間で強い技を教えてくれないとか……。このようなことで師弟関係が悪化してしまうことも沢山知っております。
今度は適当に学んだ有名先生の弟子の角度からも考えたいのですが、このような先生はご自分は毎日のようにきとんと練習に励んでいるとは考えられないですし、その方のところで勉強なさる生徒さんも勿論習得出来る内容は限られてしまいます。そして、毎日、一生懸命練習する生徒さんは本当に短期間で「某大師の弟子」を超えることも実に簡単ですね。「某大師の弟子」はこのようなこともご自分でもはっきりわかっているはずですので、余計に何も教えないようになります。
結果、何手を隠したりする師匠はいますが、中国武道が弱くなったのは基本的に教える側と学ぶ側の両方の責任になります。師匠が毎日のようにご自分で一生懸命鍛えていれば、技をすべて弟子に教えてしまっても弟子に負けない自身があればいいですよ。まして太極拳のような内家拳では技よりも時間をかけて習得する「太極勁」が勝敗のポイントなのできちんと練習している師匠は全然心配することがありません。弟子や学生の皆様は学ぶ側の心構えをもう一度確認し謙った気持ちで練習しましょう。そしたら師匠の皆さんはきっと教えてあげますよ。
いつか私が教えた方で私を超える方が出たら、私は素直に喜びますよ。
三手残す?
2013年7月10日